超高温材料(MoSiBTiC合金)の状態図と凝固過程に関する研究

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現在,ジェットエンジンの高圧タービンブレードには主にNi基超合金が使用されている.しかし,Ni基超合金を使用した高圧タービンブレードでは冷却構造が必要であるためエネルギー変換効率の低下が問題視されている.

そこで,優れた高温強度を持つMo-Si-B合金に低密度のTiCやZrCを添加することでNi基超合金と同程度の密度を維持しながらNi基超合金よりも優れた高温強度を示すMo-Si-B基合金が新規超高温耐熱材料として注目されている.本合金は高温クリープ強度や室温破壊靭性に優れていることから,次世代の無冷却高圧タービンブレードへの利用が期待され,その状態図の整備が求められている.

図1(超高温材料の状態図)

電磁浮遊した溶融TiC添加Mo-Si-B合金の凝固過程のその場観察(合金上部から観察)

 

黒体放射を用いた超高温熱分析

当研究室では1800 ℃以上で利用できる黒体放射を用いた超高温熱分析装置の開発している.温度計測にはCuの融点,Ni-CおよびRu-C合金の各共晶点を温度定点として校正を行った放射温度計を用いている.

この超高温熱分析装置を用いてMo-Si-B基合金の熱分析を1600-2100 ℃の温度範囲で行った.得られた冷却曲線上には固相の晶出に伴う複数の変曲点が確認され,液相線温度を含む各相変態温度を決定した.

図2(超高温材料の状態図) 図3(超高温材料の状態図)
黒体放射を利用した超高温熱分析装置の概略図 超高温熱分析装置で得られたTiC添加Mo-Si-B合金の冷却曲線の一例

 

急冷凝固試料の断面組織観察

また,固相が晶出する過程におけるミクロ組織の変化を観察するために,溶融試料の内部対流を抑制できる静磁場印加電磁浮遊法を利用した超高温熱物性計測システム(PROSPECT)用いて浮遊溶融合金を高温側および低温側の復熱現象後に保持した後に急冷凝固させた.得られた各急冷凝固試料の断面組織を観察した.

図4(超高温材料の状態図) (a) T2および (b) T3で保持後に急冷凝固した
TiC添加Mo-Si-B合金の断面組織

 

これらの結果を基に熱分析で得られた冷却曲線に現れる各変曲点に対応する相変態を高温側から順に判断し,各相変態温度に及ぼす合金組成の影響を調査し,各合金における凝固過程ならびに状態図について検討している.

研究成果

こちらの論文をご覧ください。
Hiroyuki Fukuyama, Ryogo Sawada, Haruki Nakashima, Makoto Ohtsuka, Kyosuke Yoshimi
Study of solidification pathway of a MoSiBTiC alloy by optical thermal analysis and in-situ observation with electromagnetic levitation
Scientific Reports, vol. 9 (2019) 15049
https://doi.org/10.1038/s41598-019-50945-z