金属資源プロセス研究センター

CMPM Report Vol.00

新しい金属資源の英知を再創造する

「金属」と一言でいってもいろいろあり、大きく分けると鉄鋼と非鉄金属となります。鉄鋼は鉄をベースにした鋼材で、日本における粗鋼の生産量は年間1億トン以上、身の回りの生活に関わるものや社会基盤を支えるものに不可欠です。例えば、携帯やパソコン、車、家具、家電などの家の中のあらゆるものが鉄製品でできているだけでなく、船、ビル、工場などの規模の大きなものまで鉄鋼が関わっています。鉄鋼はネジのような小さな部品から、大規模な構造物まで幅広く使われ、安価であることから汎用性の高い材料です。
一方、非鉄金属というと鉄以外の金属のことを言い、非鉄金属は、アルミニウムや銅、チタン、マグネシウム、ニッケルなどのほかに、レアアースも含まれており、軽さ、導電性、強度など特殊な機能を持ち合わせているものも多く、鉄だけでは実現できない用途で現代社会を支えています。言い換えると、様々な金属があらゆる局面で私たちの生活を支え、そして、同時に最先端科学の作り出す未来も担っているのです。
東北大学多元物質科学研究所は旧選鉱製錬研究所を起源としています。昭和12年の科学審議会の特別委員会において、政府が鉄鋼等の重要金属資源の製精錬に関する研究所を常置する必要があるとしたことから、昭和16年3月、勅令により、選鉱製錬研究所が設置されました。昭和24年には国立学校設置法により東北大学附置研究所となり、その後、時代とともに選鉱製錬研究所は素材工学研究所に改組となります。

鉄鋼だけでなく、他の元素の機能を付加して、耐久性や強度、耐食性のある特殊鋼、非鉄金属が研究対象になったことが大きな要因です。鉄鋼産業や非鉄金属産業は日本の経済を支える大きな基盤の一つであり、経済成長を牽引する製造業にとって、なくてはならない存在です。

しかしながら、今日、日本は大きな局面に立たされています。金属産業に必要な金属の知識を持ち合わせた人材の枯渇です。宇宙、ロボット、ナノなどの最先端の研究が注目される中、基盤となる金属研究への取り組み意識が低下してしまったことが原因かもしれません。今こそ、金属産業を支える知識を持つ人材の育成と輩出が必要とされています。

そこで平成30年、多元物質科学研究所はこれまでの沿革と金属、選鉱・製精錬に関わる研究分野の幅広さと強みを活かし、金属の深い知識を有し、金属資源を分離・回収、有効利用できるスペシャリストの育成に取り組み始めました。関わる研究者は多岐に渡り、廃棄物資源化プロセス、核燃料プロセス、資源循環・処理、都市鉱山などの戦略的研究ミッションを効率的に遂行できる研究組織を編成し、技術者・社会人教育、そして若手研究者を育成し、産官学研究連携に積極的に取り組みます。これまで、本学、そして日本の強みであった金属研究の英知を今ここに再結集させ、再創造することを目的としています。

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