卒業生からのメッセージ

第4回 杉山睦さん(2003年度・博士課程卒) [2021年10月11日掲載]

     ~学生時代に接した“研究以外のコト”の大切さ~

 学部時代は半導体に関する知識や勉強量が多かったわけではなく、学部卒で就職する予定だったので、「電磁気演習を習ったことのある先生」くらいの気持ちで、秩父先生が当時助手だった研究室を気軽に選びました。秩父先生の教育方針の良いと(個人的に)思うことは、学部学生だから・新人だからといった差別・別け隔てなく、やりたいといえばなんでもやらせてもらえることでした。まだインターネットが一般に普及する前の時代に研究室のホームページを立ち上げたり、狭い研究室の居室に4年生が勝手にロフトを建築したり、今考えれば研究室に入ってきたばかりの4年生によくそんなことやらせるなぁと今なら思いますが、おかげで「あ、修士に進学しても楽しいのかも」と思うようになりました…。並行して、理論は全く理解できないままInGaNのPL(当時、不均一性と発光メカニズムの相関関係がちょうど明らかになる時期でした)測定を手伝っていくうちに、多くの著名な先生方の打ち合わせに同席させていただけるようになったりして、学部生でも「ホンモノの研究者」を目の当たりに出来る環境が心地よくなり、(進学する気がなく推薦入試の権利を放棄してしまっていたので)受験して大学院に進学しました。当時は私立大学の東京理科大学だったので、学費を考えて博士は念頭になく就活をしていたのですが、秩父先生が筑波大学に移ることを修士1年の3月に宣言され、気がついたら2ヶ月後には就活を辞めて筑波大学に進学することに決めていました…。

 今考えると、結構イイカゲンな人生の決断の連続だなぁと思うのですが、秩父研には「人生を任せてもまぁ大丈夫だろう…」という(上手く言えませんが)空気がありました…。当時はカネも装置も貧弱で、キムワイプすらケチケチ使う研究室でしたが、それでも研究に対する貪欲さと、研究方針のセンス、そして装置や測定系の改造能力など、将来研究者(アカデミックでなく企業に就職する場合でも)として、身に付けないと生き残れないことを、気がついたら学部生時代から修得できていたわけで、今考えるとありがたいなと思います。有名な研究室だと、学生はプロジェクト予算で買ったブラックボックス装置をいじくって先生にデータを出すことも多い時代で(それが良いという学生もいるので否定はしませんが)、装置を作って、評価系を作って、データを直接共同研究者と対等に議論する場を学部時代から与えてくれる研究室は(主宰者からみれば効率悪いので)そう多くないと思います。

 おかげさまで博士課程の後は、秩父先生が助手として働いていた(私が修士まで所属していた)研究室の助手になり、そのまま今では研究室を持つまでになりましたが、結局杉山研の研究室ポリシー≒秩父研の(当時の)ポリシーになっていますので、学生時代に受ける研究教育って大切だなぁと思います。学生から見ると研究者は皆立派に見えるかもしれませんが、アカデミックでも企業でも、口だけ達者で研究センスの無い・出来の悪い研究者が多くいます。箸の持ち方や鉛筆の持ち方は大人になってから矯正するのが大変で、最初に持った時にキチンとしておくことが大切なのと一緒で、(天才は別として)普通の理系学生にとって「最初に属した研究室・指導教員の学生に対する研究センス・能力が、学生のその後の人生まで左右する」と思います。よく「大学時代○○の研究すると将来△△関係の企業に就職できますか?」的な相談を学生から受けますが、研究活動は常刻々と変わっていきますので、“5年後に役立つ研究テーマ“なんて誰にもわかりません。でも、どんな研究テーマでも、それを通して「研究センス」を身につけておけば、きっとどんな分野に変わっても成功すると思います(実際私は、秩父研時代の7年間で扱ったGaNの研究は、独立後はほぼ行っていません…)。そういう意味で、秩父研にあまり熟考しないで人生を任せてしまって、結果良かった反面、今度は私自身が研究室を運営する立場なので、秩父研で育んだ(はずの)研究センスを学生にきちんと伝えていかなければと思うばかりです…。

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学部4年生(1997年)のときにはじめて発表した国際学会(ICNS-97)で、秩父先生(右)と中村修二先生(中央)と…。

第3回 八巻譲さん(1998年度・修士課程卒) [2021年8月3日掲載]

     ~研究活動での学び・経験、20年以上経ってもしっかり生きています!~

 ■当時の研究内容■

 CIS系薄膜太陽電池の電力効率向上を目指し、秩父先生ご指導のもと、各機能膜積層時の下地層へのダメージ低減のため、ヘリコン波励起プラズマスパッタ法を適用した透明導電膜の成膜方法を主に研究していました。

 ■当時の良かった点■

 大学4年当時、先輩につれられスパッタ装置のステンレス治具を町工場に持ち込んで加工してもらったり、機械工学科の工作室でスパッタリングのターゲットとなるZnO焼結体を配置する治具を作成、角度調整を試行錯誤したりと装置づくりからスタート、「ヤクルトスワローズに学べ」と先生のご指導のもと、ヘリコン波励起プラズマ発生のためのアンテナも銅板を自分たちで形状加工して作成したり、考えながら一から作っていくものづくりを体験することができました。大学院時代には国内研究会から国際学会まで多くの発表機会をいただき、特に当時イギリスのサルフォードで開催されたICTMCに参加した際は、学会直前のベルリンのハーンマイトナー研究所訪問、研究所の方々とのパーティなど、第一線の研究者の方々との交流、”English Only!” と温かいご指導あり、その後のロンドン周遊・ビートルズ発祥の地訪問とともに大変有意義な時間をいただきました。在学期間通して秩父先生の研究者としてのご活躍を間近で感じながら(よく「ネクタイ締めたら研究者は終わりだ!」と言われた記憶があります。)、研究室メンバーとのオフタイムも大切にされながら研究グループとして一体感を醸成される中に身を置くことができ、大変勉強になった3年間でした。

 ■現在の仕事とのつながり■

 現在は半導体集積回路設計から化合物半導体デバイスを手掛ける国内メーカーに勤務し、ハイエンドオーディオ製品開発に携わっています。製造プロセスの理解に半導体物性の基礎知識を活かしつつ、集積回路上の素子の非線形性や寄生成分の影響を考えながら開発チーム一丸となって製品価値向上に取り組んでいます。当時と現在の仕事の一番のつながりは、研究に対する姿勢や反骨心のように思います。想定外の問題が発生した時、組織の中で生じる様々なことを、自分の糧にしながら仕事をすることができていると感じています。

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学生当時ベルリンのハーンマイトナー研究所を訪問

第2回 吉田丈洋さん(2000年度・修士課程卒) [2021年6月28日掲載]

     ~粘り強く取り組んでの成功体験は糧~

 研究室在籍当時、私は、秩父先生が考案されたヘリコン波励起プラズマスパッタ法を用いて、サファイア基板上へのZnOのエピタキシャル成長の研究を行っていました。実験を繰り返しても多結晶しか得られずくじけそうになったこともありましたが、苦労の末、初めてエピタキシャル成長に成功した時の感動は今でも忘れられません。私は先生が筑波大学に着任された年の学生でしたので、何もない埃だらけの空の研究室のインフラ整備から始めて、ある一定の研究成果にたどり着けたその喜びはひとしおでした。エピが得られたことでX線回折による評価にも多大な興味を抱くことができました。この経験から化合物半導体の結晶成長に興味を持ち、長きにわたりGaN基板の代表的なメーカーでGaN基板の高品質化に関する研究を行ってきました。そこでX線回折に関する知識がかなり役立ち、幾多の目覚ましい成果を上げることにつながりました。それらの成果が認められ、今年、気相成長の装置メーカーに転職することもできました。

 秩父先生から受けたご指導はすべて現在の仕事に活きていますが、中でも、学術的な話ではないのですが、「その一回の実験にどれだけのコストがかかっているのか試算してみろ」と言われたことが強く印象に残っています。これは浅い考え、といいますか、何も考えずに適当に条件を変えて実験をしていた私を戒めるためのご指導でありました。秩父先生は企業での勤務経験がある先生ですので、特にコスト意識が高いのだと思います。おかげ様で学術的によく考えて実験する癖が身に付き、コスト意識が特に重要である企業の研究者として、長期にわたり活躍できる人材になれました。

 これまでの私の人生を振り返ってみると、秩父研究室で大学院生活を送れたおかげで、私のキャリアを築き上げた前職の選択につながり、その前職で目覚ましい研究成果を上げる土台を培っていただけたおかげで学位も取得でき、研究発表で目立つこともでき、そのおかげで現職への転職にもつながって、宝くじの1等に当たることと同じくらい、本当に幸運だったと思っています。

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第1回 尾沼猛儀さん(2003年度・博士課程卒) [2021年5月10日掲載]

     ~「物理」と「工学」の融合がここにある!~

 研究室在籍時は、III族窒化物半導体薄膜の光物性計測を主に行いました。当時、筑波大学にあった研究室で、チタンサファイアレーザーなどの最先端の装置に触れつつ、分子線エピタキシー装置などの結晶成長装置の立ち上げを行ったことを懐かしく思います。光物性は主にアルミニウムを含む窒化物半導体の計測を行いました。今となっては、265 nmや280 nmなどの深紫外線LEDが商品化されていますが、当時は、高輝度青色、緑色LEDや青紫レーザーダイオードの次は紫外線光源をLEDで!ということで、世界中の研究者が開発競争を行っていました。その中で、世界最高品質の結晶を手に、最新のデータを国内外の学会で発表する機会をたくさんいただけたことは、なかなかできる体験ではなく、今考えると、とても幸運だったと思います。

 精密な物理計測から、半導体の結晶成長、ガス配管やガラスの溶接加工まで、信じられないペースでマルチにこなす秩父先生から、研究者としての「いろは」を教えていただきました。AI機能の登場により、実験装置のオートメーション化が加速度的に進んでいますが、マニュアルな装置から捻出した研究成果は、ときにオートマチックな装置では出せない「色づき」を醸し出すことがあります。少し抽象的な表現ですが、その色がうまく出せたとき、「物理」と「工学」の融合が起こるかもしれません!?まずは、その色を見分ける目を養う必要がありますね。私は、研究室で、その見分ける目を身に付けることができたと考えています。

 現在は、工学院大学先進工学部応用物理学科に専任教授として勤務し、固体物理学、光物性などの講義や学生実験の指導を行いつつ、研究活動を行っています。対象は主にワイドギャップ酸化物・窒化物半導体です。秩父研で養った目で、今日も学生と一緒に楽しく研究活動に励んでいます。

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OB・OG会

 2018年10月28日 第4回秩父研OB・OG会を開催しました!