多元研の若手研究者に聴く|藤枝俊・山﨑優一・小関良卓
2016年5月18日|多元物質科学研究所事務棟大会議室にて
#2 きっかけ、これからのこと、メッセージ
Q4:大学の研究者になろうと決めたきっかけはどんなことですか?
小関:私は、大学は宮城大学食産業学部の第一期生なのですが、大学2年の夏休みに、大学の先生から「研究室に実験しに来ませんか」と誘われたことがきっかけです。
その研究室では、土の中にいる菌から、生理活性物質を取り出す研究をしていました。夏休み中ずっと土の中から放線菌という菌をとりながら、「あー面白いな、修士にいって研究したいな」と思っていました。卒業して一度就職したのも研究職でした。企業にいた経験もあって、実用化とか役に立つ研究をしたいというのがあります。なぜそうなっているのか?というのも興味はありますが、どちらかというと、物をつくって提案する研究が面白いですね。
藤枝:僕は、高校のときから漠然と、研究の仕事をしたいなと思っていました。
岩手大学を卒業して、東北大の修士に入ったときに、同期の人が、卒論終わったばかりなのに、投稿論文を書いていたんです。びっくりしたんですが、僕も投稿論文を書くことを目標にしました。結局1年間はサンプルを作り続けたんですけど(笑)。修士が終わるころに投稿論文を出せて、すごく嬉しかったですし、充実感がありました。そのときに、「研究者はいいな」と明確に思いました。ずっと、もやもやと思ってはいたのですが、論文を出したときに再確認した感じです。
山崎:私も、最初に論文出したときは、それまでの人生で経験がないほど価値があることだと思いました。論文を書けるのは、世の中のすべてを知っている仙人のような人なんだと思っていたけど、そうじゃなかった。「自分の研究は自分しか知らないし、世界中の誰よりも自分がよく分かっていて、最先端の成果を出したということなんだ」と先生方から励まされながら論文を書いて、認められたときはすごく嬉しかったです。論文は、自分が死んでも残るし、研究の形跡がずっと残っていく。どんなに小さなことでも「科学に貢献できた」と実感できて、素晴らしい職業だなと思いました。
小関:私も、始めて論文が通ったときすごく嬉しかったです。
藤枝:最初の論文はいつですか?
山崎:大学4年のときです。
といっても実は4年にあがるときに留年して、仮配属で研究テーマをもらったので、既に2年ほど研究していましたが。成績も就職も不安だったけど、せっかくだから頑張ろうと思ったんです。先生が、やりやすいテーマを与えてくれたんだとは思いますが、本当にうまくいって、調子に乗りました(笑)。
藤枝:大学の研究室には、そういう魅力がありますよね。学生が研究室に来て、テーマを与えられて、最初はよく分からないまま取り組むんですが、数ヶ月経つと別人のように成長します。そういう教育する力があると思う。それと、教員になってから気付いたんですが、先生も学生からモチベーションをもらっています。
研究に対しては、先生も学生も同じ挑戦者だから、学生が頑張っているのを見ると、こちらも頑張ろうって思います。
山崎:同じ目標に向かう仲間がいるのはすごく心強いですね。自分が向かっている問題に対して、先生も協力してくれるし、学生もいっしょに頑張ってくれる。
藤枝:これは学生に言っていいのかな?(笑)
Q5:どうやって気分転換していますか?
藤枝:平日は、同じ部屋にいる佐藤俊一研究室のスタッフ等と、毎日一緒にお昼ご飯を食べに行っています。夜も他の研究室の先生方とよく食事に行きます。
研究の話をするわけではないんですが、専門分野の異なる人といろんな話をするのが、いい気分転換になっています。多元研には色々な分野の研究室があるので、幅の広い交流を楽しんでいます。あとは、車ですね。ジープに乗っているんですが、通勤の短い時間だけでも運転するのが楽しいです。
山崎:休みの日はドライブ?
藤枝:残念ながらドライブはあまりできてません。毎週日曜日はプールに行って、必ず1~2キロ泳ぎます。疲れきるまで泳ぐと気分的にすごくリフレッシュしますし、時々タイムを計ると、確実に速くなっているので、それがまた楽しいです。
山崎:私は運動してないな。高橋研では、毎日、ティータイムがあるんです。秘書さんがコーヒーを淹れてくれて、スタッフと学生みんながセミナー室に集まっていろんな話をします。研究の話はほとんどしませんが、最近だと学生の就職活動の話とかリアルな話ができます。日曜日は、もうすぐ6歳になる息子の遊び相手をしています。最近は天気がいいので、公園に行って、一緒にソリ遊びをしたり、バドミントンしたりして、月曜日は筋肉痛になってますよ。
小関:運動してますね(笑)。お2人の話を聞いていて、リフレッシュしなくちゃいけないなと思いました。ドクター3年間はずっと張り詰めていたし、今は、立ち上がったばかりの新しい研究室なので、まだ張り詰め期間が続いている感じがしています。昨日、学生と一緒に書類棚を組み立てて、やっとダンボールが無くなったところです。
ティータイムの話がありましたが、笠井研でも、みんなが集まって話ができるように、部屋の真ん中に長机をおいたんです。そこにお皿を置いてお菓子を入れておいたら、だんだんみんなもお菓子を入れてくれるようになりました。休日は、土曜日は仕事ですね。日曜日は寝ています。買い物行くぐらいかな。
藤枝:ぜひ、若手会(多元研を職場とする若手の交流の会)にきてください。
小関:まだ緊張しちゃって、あまりリフレッシュにならないかもしれません(笑)。
- これからのこと
Q5:これからどんな研究に挑戦したい?夢や抱負をおしえてください。
小関:今研究しているテーマの最終目標は実用化ですが、個人的には、そのテーマの中でも、特に興味があるところがあるので、そこを、理学的に深く突き詰めていきつつ、次のテーマにつながっていければいいなと思っています。
藤枝:僕は、現在は磁気冷凍とは違う研究を主にしています。化学的な手法で材料を作ったり、放射光を使ってものを評価したりして、新しいことに挑戦して研究の幅を広げようとしています。いままでと違うエッセンスを勉強して、新しい手を生やし、新しい目付けたいと思ってます。将来的には、それらを駆使して、新しい「ものづくり」をしたい。自分の代名詞になる物質、機能性材料を作るのが目標です。
山崎:私の場合は、中心にあるテーマはずっと同じ、シンプルな物理の研究です。誰もが疑問に思うような基本的な問いに科学的な答えを示すのが、僕の研究テーマです。化学反応の根本原理を明らかにして、その原理を複雑な反応に応用していくのが夢です。自分なりのポリシー、信念を研究をにうまく表せたらいいですね。
- 研究者をめざす方へ
Q6:将来研究者になりたいと考えている方へメッセージをお願いします!
山崎:シンプルに、自分の信念と情熱を持って頑張ってください!
小関:高校生くらいまでは、学校で授業を受けて、答えのあるものに対して、正しい答えを導き出すスキルを身に付ける勉強をしていると思のですが、研究者になると、いま現在誰も知らないこと、先生も知らないことを、自分なりにアプローチして見つけなければなりません。答えがないことを見つけようとするのが「研究」だということを、意識して頑張ってください。
藤枝:「研究者になりたい」という気持ちを大切してほしいです。研究していていろいろな問題が出てきた時に、最初の「なりたい」という気持ちが原動力になります。もう一つは、一人で勉強して、研究していれば研究者になれるわけではないということ。いろんな人との出会いがあって助けられているんだなと、実感しています。人との出会いや繋がりを大切にしてほしいです。